2024年7月13日土曜日

あなたはいったい何を根拠に、311後の日本社会をゴミ屋敷と呼ぶのですか(24.7.13)

 私は、ブックレットわたしたちは見ている:原発事故の落とし前のつけ方をで、311後の日本社会をゴミ屋敷と呼んだ。なぜそんなひどい呼び方をしたのですかという質問に、その答えは、それが311後の日本社会の現実だからです。

それを示す1つの文書と動画を紹介します。それは2012年10月末、国連人権理事会のUPR(普遍的定期審査。この時の審査の対象が日本政府だった)に合わせ、ジュネーブに行き、福島の現実を訴えに行った。その時話した内容は、その後、実に見事と言うほかないくらい、何ひとつ何も変わっていない、ずべて放置され、ネグレクトされたままだからです。以下が原稿とその動画。
このゴミ屋敷の世界の至る所で、ドブのあわぶくのように酷い人権侵害が頻発する。先日のゆうちょ銀行の口座開設拒否事件もその一例。



ジュネーブ国連でのスピーチ「福島から訴える」草稿(2012.10.27)

1、私が申し上げたいことは、「日本政府は、今すぐ、ふくしまの子どもたちを安全な場所に集団避難させよ!」ということです。さもないと、沢山のふくしまの子どもたちの命と健康が奪われるからです。フクシマに21世紀のホロコーストを再現させてはなりません。

2、日本政府はチェルノブイリ事故から実に沢山のことを学んできて、昨年311日の福島第一原発事故のあと、その成果をすばやく、忠実に実行しました。それが日本政府の3大政策です――第に「情報を隠すこと」第2に「事故を小さく見せること」第3に「様々な基準値を上げること」でした。
(1)、情報を隠すこと
ソ連政府は避難地域を拡大したくなかったので、避難地域の外にあるベラルーシ・ゴメリの高濃度汚染の情報を隠しました。日本政府も、避難地域を拡大させないために、放射能汚染を予測するシステムによって得られた汚染情報を隠しました。その結果、この情報を知っていれば避けられた被ばくを、多くの市民が余儀なくされました。
被ばくによる甲状腺がんを予防するためには、事故後直ちに安定ヨウ素剤を服用することは周知の事実でしたが、ソ連政府は市民に安定ヨウ素剤を配布しませんでした。そのため、多くの子ども達が甲状腺がんになりました。日本政府も安定ヨウ素剤を配布しませんでした。独自の判断で配布した町に対し、回収するように命じさえしました。その結果、いま、沢山のふくしまの子どもたちの甲状腺に異常が見つかっています。

(2)、事故を小さく見せること
ソ連政府は、事故後最初の演説で「放射線のレベルは人体に影響はない程度だ」と言いました。日本政府も、事故直後「健康に直ちに影響はない」を連発しました。

(3)、様々な基準値を上げること
ソ連政府は、キエフ市が学童疎開を開始する前日に、年間被ばく許容基準を100倍に引き上げました。その結果、キエフ市以外では学童疎開ができなくなりました。日本政府も、自治体が学童疎開を開始する前に、すばやく学校の安全基準を20倍に引き上げました。その結果、ふくしまの学校はどこも学童疎開できなくなりました。しかし、いったい、どうやって子どもたちに「君たち福島の子供たちは、被ばくしたので、本日から放射能の感受性が20倍にアップしました」と説明したらよいのでしょうか。日本政府は「緊急時」のやむを得ない措置だと言いましたが、昨年12月、野田総理が原発事故は「収束した」と宣言したその後も、依然、20倍の「緊急時」の措置が続いています。この矛盾を、どうやって子どもたちに説明したらよいのでしょうか。

以上の結果、日本政府の3大政策の最大の被害者は子どもたちです。
原則として原発20キロ圏外の福島の子どもたちは、事故後現在まで、放射の汚染地域に住み、学校に通っています。以下は福島原発から60キロ離れた郡山市の地図です。昨年8月発表された空間線量のデータに基づき、チェルノブイリの住民避難基準を当てはめると、郡山市の市街地の殆どが、チェルノブイリの住民避難基準で住民が避難する義務を負う移住義務地域に該当します。このような危険な地域に多くの子ども達は住み、教育を受けているのです。

 
しかも、日本政府が提供した線量計は、地域住民が実際に受けている放射線量の値の半分しかないことが専門家の調査により明らかにされました(2012年10月5日「内部被曝研の報告」。


福島県の小中学校や公園の約500ヶ所で、2台の線量計が並ぶ光景が見られます(写真上)。右は政府から契約を解除された業者が納入したもので、左と比べ値が最大40%高い。理由は右が世界標準の仕様であるのに対し、左は日本標準の仕様だからです。原発事故後も引き続き、日本政府により「事故を小さく見せる」「安全・安心」神話作りが懸命に進められています。

その結果、事故後1年を経ないうちに、福島の子どもたちに次のような健康被害が明らかになりました。

3、子どもたちの健康被害
今年9月11日に福島県が発表した検査結果では、4万2千人の子どもの43%に甲状腺の異常(のう胞または結節)が見つかりました。とくに女子の被害は深刻で、6~10歳の54%、11~15歳の55%に異常が判明しました。通常なら百万人に1名と言われる小児甲状腺ガンが、38名の検査の中から初めて1名見つかりました。しかし、日本政府はガンと事故の因果関係を否定し、全く対策を取りません。


前回の4月26日の検査結果で3万8千人の子どもの36%に甲状腺の異常が見つかったとき、海外の専門家は次のように警鐘を鳴らしました(Business Insider 2012.7.19)。
「こういった甲状腺異常が一年も経たないうちに現れるというのは早過ぎます。普通は5~10年かかるものです。これは、子どもたちが大変高線量の被ばくをしたことを意味します。‥‥子どもたちに甲状腺結節やのう胞があるのは、異常極まりありません!」(オーストラリアのヘレン・カルディコット博士)
「福島原発事故後にこれほどすぐに、多くの子どもたちに甲状腺の嚢腫や結節が見られることに驚いています、なおかつこの事実が世間に広く知られていないことに驚いています。」(アメリカ甲状腺学会次期会長)

甲状腺でこれだけ早い時期にこれだけ多数の異常が見つかったということは、ふくしまの子どもたちが、今後、甲状腺の病気だけでなく心臓病など様々な病気を発症する可能性がとても高いことを意味します。それはチェルノブイリ事故による健康被害について、ウクライナ政府の最新の報告書[1]からも明らかです。
 
4、日本政府の対策
(1)、この深刻な被ばくに対する日本政府の対策の中心は除染です。しかし、チェルノブイリ事故から学び尽くしている日本政府はチェルノブイリの経験と同様、フクシマでも除染が失敗するのは最初から織り込み済みです。無意味な除染作業の間に、子ども達は被ばくし続けています。それは犯罪以外のなにものでもない、ではないでしょうか。


(2)、しかも、日本政府は、子ども達に対し「危険だと思うのなら、自主的に避難すればよい」という立場です。しかし、福島の子ども達は自主的な避難を選択しなければならないほど、何か悪いことでもしたのでしょうか。子ども達が遊んで原発を壊したのでしょうか。子ども達は自分たちが原発を誘致したのでしょうか。彼らには100%責任はありません。彼らは純粋の被害者です。他方、日本の国会も認めるとおり、福島原発事故は自然災害ではなく、人災です。日本政府は原発事故の加害者です。自動車事故では、誰も加害者に被害者を救護する義務があることを疑いません。誰も、轢かれた被害者が自分で自主的に病院まで行け、とは思いません。同じ人災である原発事故でも同様です。加害者である日本政府が純粋な被害者である子供たちに、自主避難しろと言うのは道徳的に決して許されることではありません。

5、チェルノブイリからの訓え
(1)、チェルノブイリ事故について、350の英語論文を元にしたIAEAの従来の公表記録に対し、ベラルーシ語、ウクライナ語、ロシア語を中心とした5千の論文に基づいた2009年のヤブロコフ・ネステレンコ報告[2]によれば、チョルノブイリ事故により世界で98万人以上の人々が命を失いました。福島は人口密度がチョルノブイリの5倍以上あるといわれています。
このままでは、福島で今後どれほど膨大な数の被害者が発生するのか、想像を絶するものがあります。
では。どうすればよいのでしょうか。簡単です。今すぐ、子ども達を避難させ被ばくから逃がすのです。なぜ今すぐか。チェルノブイリで世界標準とされる住民避難基準が採用されたにもかかわらず、98万人もの犠牲者を出したのは、その住民避難基準が不十分だっからではなくて、その基準の採用が事故後5年も経過してからです。人々はその間ずっと被ばくし続けていたためで、避難するのが遅すぎたのです。だから、今すぐ避難する必要があるのです。
(2)、これこそ、日本政府がチェルノブイリから学ぶべき最大の教訓です。福島の高校生がこう言いました「命のスペアはありません」。子どもの命が滅びたなら、福島が復興したところで何の意味があるのでしょうか。
集団避難はお金さえあれば実現できる最もシンプルな解決方法です。1959年、日本政府は原発導入にあたって、原発事故による被害額を国家予算の2.2倍(現在の国家予算なら200兆円)と試算済みです[3]。元々それだけの損害額を覚悟して原発の導入を推進したのです。金銭的に、福島県の子どもたちの集団避難は不可能だという言い訳は通用しません。今年4月、日本の財務大臣がIMFに、電話で、ヨーロッパの信用不安の防止のため500億ドル提供すると伝えたと報じられました。経済の復興のためにそれだけのお金が用意できるのあれば、命の復興のためにお金を準備できない筈がありません。
6、世界の良心の声を福島に
 

映画『シンドラーのリスト』を作った監督スピルバーグはこう言いました「ホロコーストで起きていたことは、当時、チャーチルもルーズベルトも知っていた」と。しかし、彼らは見て見ぬ振りをした。もし、当時、彼らが声を上げていれば、ホロコーストの悲劇も最小限に食い止められたのです。今の福島も同じです。原発を推進したいと思っている人たちは、福島の惨状を見て見ぬ振りをしています。しかし、もし世界中の人たちが声を上げれば、いま、福島に襲いかかっている悲劇を最小限に食い止めることができます。福島の子どもたちの命を救うことができます。それはひとえに世界の皆さんの良心にかかっているのです。
私たちは、何の責任のない福島の子どもたちを21世紀の「人道に対する罪」の犠牲者にする訳にはいきません。これはイデオロギーの問題でも政策の問題でもありません。子どもの命という人権の根本問題です。どうか、福島と関わる私たちと世界の皆さんとが「つながる」ことによって、福島の子どもたちを救い出して下さい。

2024年7月10日水曜日

えっ?!私たち、いつの間に、テロ組織の一味にされてたの(24.7.10)

 私たちは、今年5月出版されたブックレット「わたしたちは見ている:原発事故の落とし前のつけ方を」を一人でも多くの人に知ってもらうために、ブックレットの拡散、本代の回収、記録をおこなう新しい会を立ち上げました(「災害時の人権を考える会」といいます。その規約はこちら)。そして、「災害時の人権を考える会」の名前で、新しい振替口座を開くために、ゆうちょ銀行に口座開設の申込をし、必要な書類等をすべて準備し、受理されました。

しかし、その後、ゆうちょ銀行から、口座開設を拒否しますという1枚の書類が届きました(以下です。PDFはこちら)。

けれど、その書類にはなぜ、私たちの新しい会が振替口座を持てないのか、その理由の説明が何も書いてありません。そして、その理由についての問合せにも応じないと書いてありました。この問答無用の無慈悲な回答を受けて、私たちは、ゆうちょ銀行の(法人でない)団体の口座開設のサイト(>こちら)を調べたら、そこにこう書かれていました。

 マネー・ローンダリングおよびテロ資金供与対策の重要性が近年益々高まっていることを受け、「犯罪による収益の移転防止に関する法律」等で求められている確認に加え、下記の書類等をお持ちいただいたうえで、口座開設にかかる審査を実施しております。

そうだとすると、私たちの新しい会はマネー・ローンダリング(警察庁の解説こちら)かテロ資金の関係する組織とみなされたものと思われます。これこそ青天の霹靂!腰を抜かしてしまいました。私たちのどこに、そんな犯罪行為に関与すると疑われるところがあったのでしょうか。これを知り、今すぐ、この腹をかっさばいて、腹黒い血なぞ一滴も流れていないことを証明したい衝動に駆られました。

そこで、私たちをそのように疑っていると思われるゆうちょ銀行に対し、本日、私たちの口座開設申込を拒否した理由について、きちんと説明して下さい、もし私たちがマネー・ローンダリングかテロ資金の関係する組織と疑われているのなら、その疑いを晴らすために必要な手立てを協議する場を設けて下さい、という以下の質問&協議の申入れをしました(PDFこちら)。

これは単なるちっちゃな出来事ではありません。或る日突然、私たち庶民の取組みに「マネー・ローンダリングやテロ資金の関係する組織」というレッテルを貼られ、私たちの取り組みに必要な血液(お金)を回すための心臓ポンプ)みたいな役目をする銀行口座が開けなくなり、活動停止を余儀なくされるーーだれもがこのような目に巻き込まれる可能性があることを今回の一件は示したからです。
それは、決してささいな問題ではありません。市民が自分たちの社会を自分たちの手で運営し、統治するための基本的な市民活動、この自己統治に対する重大な規制だからです。人権でいうと、憲法が私たちに保障している「結社の自由」(21条)に対する理不尽な規制だからです。

ブックレットわたしたちは見ている:原発事故の落とし前のつけ方をのエッセンスは、理不尽な事態に対し「それはおかしい。わたしたちはその理不尽に甘んじない」です。今回、ブックレットを書いた私たちは、その最初の試練に出会いました。そこで、この理不尽に屈しないため、人権を行使するため、一歩前に出ることにしました。 それがゆうちょ銀行に対する以下の質問書です。
一歩前に出る
私たちのアクションに注視をよろしくお願いします。

(文責 「災害時の人権を考える会」代表 柳原敏夫

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質問及び協議の申入書

2024年7月10日

株式会社 ゆうちょ銀行
横浜貯金事務センター所長  様


「災害時の人権を考える会」
代表 柳原敏夫

市民団体「災害時の人権を考える会」(以下、当団体といいます)は、本年5月23日、貴社の運営する振替口座の開設申込を小田原城山郵便局にて申込をしたところ、貴社より6月26日付の書面で、口座開設を拒否するという通知が届きました。その結果、活動目的を「災害時の被災回避を啓蒙する著作物の出版の企画と販売」(規約3条)と定める当団体にとって、出版物の販売を遂行する上で不可欠な活動(売上代金の回収と記録)のための振替口座が利用できなくなり、当団体は事実上、活動停止に追い込まれるという深刻な事態に至りました。これは憲法が市民に保障する結社の自由(21条)に対する重大な規制であることは言うまでもありません。

もとより、当団体も、貴社の口座開設が無条件で認められる訳ではなく、貴社のホームページが告知している通り、マネー・ローンダリング及びテロ資金供与の疑いといったいわゆる反社会的な利用目的での開設申込に対してはこれを拒否することが正当化されることは重々承知しているところです。ところが、今回の当団体の開設申込が上記の「マネー・ローンダリング及びテロ資金供与の疑い」に該当するのか否か、上記通知にはその点についての説明が何もなく、当団体は正当な理由を知らされないまま、活動停止に甘んじなければならないという途方に暮れる事態に置かれています。

その後、当団体の調査により、「銀行業務の公共性(銀行法1条)に鑑みて,銀行の預金取引については契約自由は制限され,銀行は顧客からの預金取引の申込みに対し正当な理由がない限り承諾すべき義務がある」というのが今日の判例だと知りました。そこで、当団体は、原則として口座の開設を承諾する義務がある貴社に対し、なぜ、この原則通り承諾しなかったのか、拒否を裏付ける「正当な理由」を、しかも、例えば、単に「マネー・ローンダリング及びテロ資金供与の疑いがある」といった一般的な理由ではなく、どのような具体的な事実に基づき「マネー・ローンダリング及びテロ資金供与の疑いがあるのか」を明らかにして書面で封筒記載の住所宛に回答して頂くよう、ここに申入れをする次第です。

今回、当団体は、少なからぬ時間と労力をかけて、小田原城山郵便局にて貴社が求める口座開設の申込に必要な情報と書類をすべて準備し、クリアし、受理されました。にもかかわらず、その後、横浜貯金事務センターにて理由の全面不開示のまま拒否されたことに対しては、これが顧客のニーズに応えて企業の社会的責任を果す日本を代表する金融機関の姿なのかと大いになる困惑と不信の念がふつふつと沸いてくるのを押さえ難いというのが偽らざる心情です。

そして、貴社の回答は、当団体が活動停止に甘んじざるを得ないのかどうかという瀬戸際に立たされた市民団体の活動に関わる重要な事柄ですので、この質問書と同様にブログにて公開いたします。

その上で、貴社より頂いた回答により、万が一、例えば「マネー・ローンダリング及びテロ資金供与の疑い」をかけられるのが尤もだと判明した場合には、当団体としては、即刻、冤罪ともいうべきその疑いを晴らす所存でありますが、なにぶん市井の人で構成される当団体はマネー・ローンダリング及びテロ資金問題のずぶの素人です。そこで、マネー・ローンダリングらの問題に通暁されている貴社から当団体に対し、何が揃えばその疑いが晴れるのか、この点について説明を果していただく社会的責任があるものと考えます。よって、そのための対応策を検討する協議の場を設けていただくことを強く求める次第です。

 当団体にとって死命を制する重大な事態に対して、以上が当団体からのささやかな要望のご連絡です。これに対し、もし不幸にして、このような顧客の要望に応えることが適わないという対応をされる場合には、誠に不本意極まりありませんが、当団体としては、司法の場で、貴社の口座開設を承諾する義務に基づき、今回の拒否を裏付ける「正当な理由」の開示を求める所存でありますので、念のため申し添えます。

 以上の顧客からの切実な質問及び協議の申入れに対し、市民社会から貴社の不適切営業は「巨大銀行の奢り」と非難を受けることのないように、誠実なご検討と回答を願ってやみません。
                                   以 上

 

どうか、私たちにテロ組織という「えん罪」を晴らす方法を教えて下さい(24.8.4)。

  私たちは、今年5月出版されたブックレット「 わたしたちは見ている:原発事故の落とし前のつけ方を 」を一人で も多くの人に知ってもらうために、ブックレットの拡散、本代の回収、記録をおこなう新しい会を立ち上げました(「災害時の人権を考える会」といいます。その規約は > こちら )...